「blank」

私がひとりでいたとき
いくつかの出来事がありました
あなたにもそうなのだと思います
しかしあなたの方はおそらく
どうでもいいと思っているのかもしれません

でも話しますね
駅のホームでおじいさんに話しかけられた話です
ああ そういえば
あなたとよく使っていた駅を過ぎるとき
つい息を止めてしまうのですがあなたはどうですか

話を戻します
おじいさんは私の手元にあった缶を見て言いました
その缶には飲み物が入っているんですか
私は「そうですよ」と答えました
周りに水滴がついていますがもしかして冷たい飲み物ですか

え、はい、そうです
すごい・・・それはどこで売っているんですか
私はホームにある自動販売機を指しました「あれです」
ええ!?
そのおじいさんは本当におどろいたようだったんです

買うのをお手伝いしましょうか
おじいさんは少し考えてから言いました「お願い、できますか」
それからふたりで数メートルの距離を歩きました
あなたと同じものが飲んでみたいのですが、いいですかね
ディスプレイの中にある私のと同じ缶をおじいさんはみつめていました

これはどうしたら・・・
そうおじいさんが言ったので私はとっさに言いました「少し目を瞑ってください」
おじいさんは言われたとおりに目を瞑りました
私は普段財布にお金をいれるのですがさっきここで飲み物を買った時にたまたま
なんだか煩わしく思ってかばんの一番端のポケットにそのままお釣りをいれていたんです

私はそのポケットからお金をこっそり機械に入れました「さあ」
あれ・・・光っています
そうです 選択権がおじいさんにあるということです
はあ
自分の欲しい缶の下の、光っているところを押してください

おじいさんは若い人ほどきびきびとした動きではありませんでしたが
その年代の人たちよりは足腰がしっかりしているようでした
それでも飲み物の落ちた時のガタンという音にびっくりした様子から
私はおじいさんが私と同い年のような気持ちになりました
「そこにありますよ どうぞ取ってください」

おじいさんは腰をかがめて缶を取るとまず「つめたい」と言いました
そして私の顔を見たので、私は座りましょうかと言いました
ベンチに座るとおじいさんはプルトップについて思案しているようでした
私は手元にある自分の缶を使ってジェスチャーをしてあげました
おじいさんは「おお」と言って、少し手こずったようですがなんとか缶を開けました

私は「どうぞ」と言って勧める仕草をとりました
おじいさんは少し缶を見てから口を付けました「おお」
私はそういえば飲み物が炭酸だったことを思い出して心配になりました
「おいしい・・・」
しかしその言葉で私はすぐに嬉しくなりました

本当は2本の電車を乗り過ごして
もしかしたらおじいさんもそうだったのかもしれませんが
あ、この電車に乗りますねと言って私は席を立ちました
そしたらおじいさんも立ち上がって片手をびしっと上に挙げて
「ありがとう」と言ってくれました

おじいさんが缶や自動販売機のことを本当に知らなかったのか
本人に聞いていないのでもうわかりません
でも私は分からないことがあるって幸せだなって思いました
おじいさんも炭酸が好きというデータも手に入りました
なんだか素敵なことだと思いませんか

とある人にこの話をしたら
目を瞑っている間にお金を入れて結果的に無料で手に入るように思わせたことは
今後おじいさんに恥をかかせることになるからあまりよくなかったかもね
と言われてしまいました
うーん、あなたはどう思いますか


b



20140814 1545




[PR]
by yasuharakenta | 2014-08-12 15:45 | 詩、歌詞