「父親のスピーチ」


最初は単語を発しただけで
最初はつかまり立ちをしただけで
最初は幼稚園に行って帰ってきただけで
最初はランドセルを背負っただけで
最初は制服を着ただけで

君が何者でなくても
君が何もできなくても
僕はすごくうれしくて
僕はすごくしあわせだった

最初はすぐに喋らないだけで
最初は頭をぶつけただけで
最初はすり傷を作ってきただけで
最初は突然暗い顔をしたりだけで
最初は先輩の悪い噂を聞いただけで

君が何者でもなく
元々何もできなかったから
僕はすごく心配で
僕は仕事にも行きたくなかった

だけどそのうち。

君は何者かになっていて
君は何でもできるようになっていた
僕と少し距離があいて
僕は空気を読むようになった

ちょっと宿題をしないくらい
ちょっと食器を片づけないくらい
ちょっとだらだらしてるくらい
ちょっと鬱陶しく思われて
ちょっと嫌われるくらい

最初のことを思い出せば
何も怒ることなんてなかったのに
僕も大人になりきれなくて
君をがっかりさせたね

今僕が君に愛してると言っても
君は僕を疑うだろう
今僕は君にいつものように照れて
その場しのぎのことを言うこともできる

だけど僕は君を愛しているんだ
君は怒るかもしれないけど今でも
君はまだ何もできないし
君はまだ何者でもないんだ

何者でもないまま
自信を付ける時間もないまま
君は家族と生きて
親になったりするんだ

君も僕ももしかしたら
昔のように戻りたいと思うこともあるかもしれない
照れもなく抱きしめたり
一緒にダンボールで滑ったりしたいかもしれない

だけど僕らは戻れない
愛してると言うのにも勇気が要るようになった
でもそれは君が
僕の元から離れていった証拠なんだ

君はこれから
生まれたときのように戸惑うだろう
だけど僕はもう支えない
自分で考えて横の人を頼りなさい

だけど多くのことが
難しくうまくはできないことに
君がこれからの日々で気付いたら
僕と君はまだまだいい関係になれるはずです

あなたの幸せを祈っている
あなたが泣くのはあまり見たくない
僕は君の親なので
君が嫌がっても祈っています


20160807 0048




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by yasuharakenta | 2016-05-09 00:48 | 詩、歌詞