「ただのお手紙」


 ひさしぶり。元気ですか?

 自分で聞いといてなんだけど、元気ですかという言葉ほど適当な言葉ってないよね。元気じゃないですって言われたら困るくせに。元気ですって言われても別にうれしくないくせに。お早うとかと同じで、元気ですかはその意味がこぼれてただの挨拶になったんだね。
 僕の元気ですかも挨拶としてのほうです。だって、僕は君が今元気でも、今元気じゃなくても、会いに行けません。元気だと会いたくなるし、元気じゃないと悲しくなるから、普通くらいでいてくれると、僕としてもちょうどいいです。
 ここは寒かったり暑かったり、人が多かったり少なかったり、不思議なところだけど特別嫌な気持ちはしません。僕らのいる世界はたいてい不思議なのかもしれないね。何かがずっと一定のところより、このほうが自然的な気がします。
 周辺環境のことだけ書いて、何一つ具体的に書かないのには理由があります。それは、具体的に書きたくないからです。具体的に書くと君も、僕のことをあれこれ思ってしまうから、これは僕なりの優しさだと思ってくれると嬉しいです。
 つまりこの手紙は、君のことを具体的に質問もしなければ、僕のことを具体的に言わない、なんでもない手紙です。この手紙は存在意義がこぼれてただの手紙になったんです。でもそれでも君に何か届けたかった。
 またひとつ僕のわがままを君は許す。僕はごめんともありがとうとも言わない。これで二人はいつも通りでいられるはずです。だけど苦しくなったらどうぞこのレールから降りてください。嘘です。
 いつか万が一、億が一、兆が一、また会うことができたら、僕は全てのごめんとありがとうを言うはずです。だけど実際は言葉を失ってキスをしてしまうかもしれません。君の目が僕を見ていたなら。
 君がいることをほんとうに嬉しく思います。どうかいなくならないでください。

 では、またね。元気で。



 20170304 2211




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by yasuharakenta | 2016-09-17 22:11 | 詩、歌詞