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制作秘話と解説 26-30

どん!出し惜しみしてる訳じゃないのよ!
スランプを乗り越えろ!制作秘話と解説、第6回!




26. 世界中が知ってても
http://ptpk.exblog.jp/14926286/

僕の友達に画家がいます。美大生の。
生きるのがとっても下手で、でも懸命な人です。
彼女の名前は木村智穂。ちょっとアイドルかぶれで誤解されがちな、素敵な人です。

彼女との帰り道、今度個展やるんですけど来てくれますかって誘ってもらいました。
絵を見たこともないくせに「グループ展じゃなくて?」と聞き返したのがとても恥ずかしい。
「それはグループ展で、個展です!」「行く、行きたい!」

でも実は僕は、美術館であんまり分かんない気がして落ち込んだことがあって、
しかもその絵をおばちゃんたちが食い入るように見ていて余計に落ち込んだりして。
行きたいとは言ったものの上手に嘘をつけないから、
彼女の絵を見たときにどんなリアクションをとるのか、少し不安でした。

でも、知ってる彼女を信頼すればよかったんです。
技術的なことは分からないしひいき目で見てるのかもしれないけど、すごく楽しかった。
(ひいきされるのも才能だと思います。)
いい表現には悔しく思うことが多いのに、彼女の場合は不思議とうれしくなるというか。
眼中にないとかそういうわるい意味ではなくてね。

「言葉じゃうまく伝えられないから絵を描くんです(ギターを弾くんだ etc.)」
という言葉を僕は少し疑ってるんですけど、
目の前で言われるとなるほどなぁと不思議な気持ちになりました。

そんな不器用な彼女が、なけなしの言葉で書くキャプションにも惹かれました。
(彼女の言葉の方が、よっぽど詩的だと思うことがたくさんあります。)
白い小さな部屋の真正面に飾ってあった絵に付けられたキャプションは確か

「世界中が知ってても 私のしらないことがあるかもしれないし
 私だけが知ってて 世界中がしらないことがあるかもしれない」

その絵の不思議さと、そのキャプション、何度見ても楽しくて、
そのときに、同じテーマで何か書ける気がしていたんです。

その夜に書いたのがこの詩です。
人を想って書くと、少しの(技術的な)粗もなくしたくなるから、
この詩は、とても詩らしい詩になりました。
ただひたすらに書いていましたが、世界と対峙する少女性をちゃんと表せたと思います。
というかそれが表したかったんだなって思いました。

最初に彼女にメールで送って、そのあと急に恥ずかしくなって、
でも喜んでくれて、その日の夜にアップしました。
彼女が一番気に入ってくれたフレーズは、どこでしょう?
最後に書き直したその部分が、僕もこの詩の要だと思います。

ありがとう木村智穂ちゃん。正直、俺は何もしていないね。


27. 46
http://ptpk.exblog.jp/15094818/

世界中が知っててもが完成した時、これからスランプになると思ったくらい、
明らかに自分の中でハードルがあがりました。実際、その通りになりました。

書けない期間に始めた制作秘話と解説というコーナーで(このコーナーですね。笑)
自分の成長とか、世界中が知ってても以前の良さも思っていたよりあって、
超えてなきゃ進めないと思う反面で、超えていく自信はどんどんとなくなっていきました。
はんそくの解説に書いた気持ちとは逆の気持ちになっていたんです。

でも全然書けませんでした。
なにも思い付かないし、書こうと思っても出てこない。
やっと書けても、ボツというほどではないけどというものが続きました。
要は、僕は参っていたんです。

以前にノートに書いていた詩を、このタイミングで載せようかとも考えました。
元々、いずれはそうしよう思っていたんです。
でも世界中が知っててもやマボロシの夜と同質以上のものを書ける自信がないまま、
過去のものに頼ったらだめになると、そう思ってじっと耐えてました。

この詩が書けたのは、月食があった次の日です。
未公開の「宇宙空間で手をつなぐ」という詩のモチーフになった子と帰っていた夜に
歩道橋で空に向けてカメラを構える人を不審に思ってふたりで夜空を振り返って、
同時に月食のことを思い出して、同時に声をあげました。
その後もしばらく空を見ていました。すごく貴重な時間でした。
(そういえば、どっちも宇宙の詩です。ほとんど書いたことないのにな。)
(あと、未公開って、ねえ。笑)

過去のノートを眺めていた時に強く頭に残った
「あなたに届く最大の言葉って一体なんだろう」という言葉と、
ずっと考えている46億年の秘密というか不思議と、
ただ空を見ていたことが頭の中で一緒になって、この詩ができました。
(ごちゃまぜにしたのはこれが初めてだったと思います。)

今思うと、ブランクはたったの一ヵ月なんです。スランプと呼んでいいかもわからない位。
世界中を知っててもを超えたかどうかは結局分かりませんでした。
それでも、書けた、と思えたことが嬉しかったですね。
勝手に立ちあげたブログで、勝手にプチスランプになったりして、
しかもそれがたった一ヵ月だなんて、馬鹿だなという以外に言葉はありません。
でも、なんとか抜け出せました。

この詩は彼女に最初に読んでもらいました。メールで送って。
そしたら会ったときに「なんか変わった」と急に言われて
僕はその時ちょうどコンタクトに変えてたので「あ、メガネをね」と話し始めたところで
「あの、ウタ、よんじゅうろく‥」と言われて、僕はものすごく恥ずかしかったです。笑
すきと言ってもらえたから、よかったけれども。
人の口から自分の作品のタイトルを聞いたのもほとんど初めてで、うれしかったですね。


28. ライト
http://ptpk.exblog.jp/15131569/

投稿ボタンをとりあえず押して、急に書き始めました。
そしたら1行目からすらすら書けたんです。ほとんど悩まずに。
46から1週間で書けたのでスランプ抜けれたんだなって思えて嬉しかったですね。

せっかく培ったと思えた世界中が知っててもや46と
少し空気が違う詩に最初はとまどいましたが、実は僕はこっちが好きです。

内容とは違って、タイトルはすごく迷いました。
ちょっと変なふたりの会話を、タイトルでは肯定したくて。

即興で書いていたので、書き始めは主人公の感情が分かりませんでした。
怒ってるのかな?とさえ思っていたんです。
でもその予想は大きく外れて、書き終わりには、
実は言わないでとも聞かないでとも思ってないかもしれないくらい
すごく素敵なでこぼこのふたりが存在していました。
最後の「笑ってないよ」はほとんどの人が嘘だと分かるんじゃないかなって思うんです。
そういう小さな、けど大切な表現が出来てうれしかったです。

へんてこりんなこの世界は、決して間違ってない。きらめいてる。
タイトルは「ケース」「case」「esac」「talk」から「fun」で決まりかけて、
「反」と「返」を含む言葉を探して「反数」「opposite」、さらに「スタンダード」を経て、
タイトルは、数日かかって、「ライト」になりました。
個人的には少し珍しいタイトル。でもこれしかないなと思えました。
ライトに変更してプレビューし直すと、中で信号の話をしていて驚きました。
全然意識してなかったんです。というかその箇所自体雰囲気で書いたところだったので。笑
全部ひっくるめて、なんか、ようやくたどり着いた気がしたんですよね。

この詩が出来た次の日に曲がついています。そのうちにアップします。
タイトルをfunから変える気になった理由は、
その仮録音のファイル名を[naninani.wav]としていたからです。


29. 先手
http://ptpk.exblog.jp/15204495/

クリスマスイブに手紙が届きました。
遠くからでも一目で、あの人からだって分かる手紙。
開いたら泣くかもと思ったのに、めちゃくちゃに笑ったんです。
初めて、メリークリスマスって心から思いました。

「人と違っていたいくせに、人の影響をちゃんと受けれる」
というのは、自分の好きなところのひとつでもあります。
その人の影響もたくさん受けました。

でも(本人もそう書くくらい)本当に素敵な手紙で、
僕はこのままじゃ追い付けないと思ったんです。
自分にしか出せない速度。それをあげていかないといけない。
美味しくならなきゃって、先手をいくつもりでいかないとって、思ったんです。

僕は誰かを大切に思うと、その人も同じくらい大切に思ってくれているのかを、
思えばいつも気にしていたように感じます。
大切に思っているのが例え僕だけだとしてもそれぞれの素敵さは変わらないのにと思ったら
そうやって気にすることはもう、やめようと思いました。
そして出てきた言葉が、この詩の言葉です。(短いので言いそうになりました。)

先に言うのに、俺も好きだよと言えるくらい、僕は速くならなきゃって思ったんです。
元旦という位置も、この詩にはよく合っていると思います。


30. 極限値
http://ptpk.exblog.jp/15213452/

表にださないと心に言葉をの解説のところで暗い詩は書かないと書きましたが、
この詩は暗めになっちゃいました。
最後の連が頑張ってくれているんですけど、まあ暗めですよね。
暗い気持ち、まあ、ちょっとだけ許してねという時もあります。

このブログの立ち上げ時に、
自己紹介の欄に「充実まで少々お待ちを」と書きました。
これが結構好きで、最初の制作秘話と解説では(充実ってなんだ!)と書いています。
それからずっと、本当になんだろうと思っていたのが後を引いて、この詩で登場しました。

また、この詩ではあまり好きではないはずの造語を初めて用いました。出てきちゃいました。
(46の人に、そういう、新しい言葉で表現してほしいと言われたこともありました。)
この主人公は、心でまだ悲しさを燃やし尽くせてないのでしょうか。
それとも、悲しさを燃料として心を燃やしてるんでしょうか。分かりません。
炉という言葉は、今は少し強い言葉になってしまいました。

やっぱり、暗いのを読むのはなんかですね。
悲しい気持ちに寄り添えるならいいけど、暗さに対してはいつまでもひねくれていたいです。

最後が暗いとしゅんとしちゃうぜ!
でも今回は大切な人たちの話がたくさんできてよかった。では!